本日の北京(2020年ブログ版)

軽く、リアルに北京を語るライターブログ

華やかなIT企業を支える近未来プランテーション

近頃中国の超有名IT企業T社と仕事をした知人から聞いた話。

彼女は、数年前の新語「996」(朝9時から夜9時、週6日出勤)のITの下層ハードワーカーたちの姿をまじかに見てきた。夜は9時はおろか、12時頃まで毎日残業。とにかく「中国の人は良く働く」と言っていた。

 

我が家の近くから北に伸びる地下鉄13号線の「上地」の駅からかなり行った所に何もない開発区があって、そこにいきなり、T本社がそびえ立つ。横には粗末なレンガ造りの建物があるだけで(社員寮と後から判明)、周囲にはレストランもお店も何も見当たらない。

 

中に入ると近代的なオフィスだが、廊下を通る時に見える部屋の中の様子は大量の人が大量のコンピュータースクリーンを前に出前の食事をかき込んだり、に凝視する様子だったという。

 

そして、何かしゃべりかけてても同じ次元に居ないような、ボウッとしている印象。会議で集まっても同僚同士でおしゃべりする人もいず、各自が携帯をいじる。会議全体に対するまとまり感もない。彼らから何かが抜けてしまっているような、オフになってしまっているようなそんな感じ。単に疲労だろうか?9割が血気盛んな20代の若い人で30代はここではボスだ。

 

そんな何かすごく不健康な一面があったと同時に、す・ご・いと感じさせられたものもある。

 

動画の生放送のために、開発されたAIの同時通訳穖だ。4機をプログラムして、通訳する有名人の過去のインタビュ―を学ばせて、その中で一番成績のよいものを採用。当日の通訳振りは驚くレベルの高さだったという。今や中国には数カ国語での会議の発言も瞬時にまとめて関係者に勝手に送付するようなアプリが1万円位で売られているという。音声の文字化やその反対はもちろん、瞬時にそれを翻訳できるのだ。

人間の通訳は過去のものに成る日も遠くない。中国は(プライバシー不在の)データ何でもOKな前近代的気質、失敗を恐れないチャレンジ精神と行動力、競争主義文化など色々IT開発に向いた要因が揃っていて速い。「何があろうと絶対失点しないという固い決意」で挑む日本のサラリーマン文化の対極だ。

 

世界先端というレベルの高さと同時に、世界に先んじたIT産業下の労働者の「うつろさ」を感じたという。そして彼女は言ったそれはまるで「近未来のプランテーションだった」と。

 

これ、世界最先端ITを突っ走る中国は北京、中関村での光と影の見聞録なり。