本日の北京(2020年ブログ版)

軽く、リアルに北京を語るライターブログ

スタンドアップコメディが大ブーム

2017年頃から中国エンタメでは一人でしゃべる「スタンドアップコメディ」スタイルのお笑いが流行っている。

(ただ、中国では間違えてこれを「脱口秀」(トークショー)と呼ぶ。本場のトークショーは司会者がインタビューしたり、複数で話すスタイル。)

 

お笑いオーディション番組で面白いしゃべり手がでたのが、きっかけになった。有名人は何人かいるが、最近、話題になっているのは北京大卒で東北の田舎出身の26歳の李雪琴と後述するバッシングにあった楊笠で、二人とも20代の女性だ。

 

李さんは学歴を除いては一見したところ、田舎娘風。話し方も強い東北訛でうつむいた嘆き調。彼女のネタにはずっと田舎で暮らしているお母さんとの世代間ギャップや、屈託のない母さんの非優等生的(離婚、酒飲み、再婚、節約家など)な生活振りが出てくる。あとは、職場での自分とボスとのやりとりなどだ。

 

ぐじゃぐじゃ話しているようで、ひょんと面白いことを言う。カッコを付けない素のままのところが上昇志向や優等生志向で溢れる今の中国でホッとさせてくれるのかも知れない。

 

この前は何と日本で言うなら日経新聞的な経済専門雑誌の「財新」がアングラのような会場でコメディーライブをやっていた。日経新聞がお笑いイベントをやることを想像してほしい、まさにブームなのだ!

 

そして、そこに出てきて面白話をしたのが、トップクラスの企業家や研究者だ。

●何帆・元社会科学院世界経済・政治研究所副所長、現上海交通大学教授

●外交学院歴史学の施展教授、

●ネット旅行最大手のCtripの創業者・梁建章、

●国民的7時のニュースの元キャスターの郎永淳と北京の企業家

それぞれがトークを繰り広げた。テーマは富・財産と自由。ここでも特別ゲストで北京大の李さんが参加し華を添えていた。

 

その他、インテルが企業キャラクターに選んだ二人も最近人気のお笑いの男女。

この数年で、ライブハウスも急増。北京青年報によると、2020年のライブハウス件数は320%増、クラブは400%増という。この窮屈な世の中でライブハウスが増えているというのだから驚きだ。

 

今や雑誌は風前の灯火だが、頑張って生き残っている「新週刊」4・15の特集も「誰が我々のネタを造っているのか?」だった。

 

しかし、やはりというか、北京では25日に「内容に違反があった」と、初めて北京のライブハウスに罰金80万円が課された。30代のMBAを持ち英語も話す友人はお笑いの灯火にも悲観的だ。「今の空気だと、お笑いは抑圧されるだろうな」と。また、「皆は誰か個人に興味があるというより、番組のスタイルや話題に興味を持っているんじゃないか?」と指摘する。

 

今年1月には恋愛する乙女心を面白く語る楊笠さんは、「男って普通なのにどういう訳かすごい自信家なのよね」という辛口?ギャグで「男子をバカにした」と批判に晒された。彼女が宣伝していたインテルまでもバッシングに遭うことに。もしやライバル企業の陰謀?と詮索したくなるほど、なぜ、そんなに問題視されるのか分からない。

 

テレビも雑誌もお堅い取り締まりが迫り狂う昨今、コメディブームは圧力に屈するのか?それとも若者の止めどのないエネルギーとして走り抜けるのか。

 

がんばれ、中国コメディ!