殺人事件がニュースになるということは、そのくらい珍しいということで、ある意味で日本の平和度を表している。米国もヨーロッパも東南アジアでも残念ながら殺人事件はたくさんあるのでニュース性はない。中国も然りだ。
昨日はたまたま、南方週末と今読んでいる2010年に出版された農村に関するルポルタージュで村の殺人事件が出てきた。
南方週末のは2025年9月に四川省成都簡陽市でおきた精神病容疑のある76年生まれの男性が村の知り合いの退職教師や親戚合計三人を続け様に刃物で殺したという事件。これまでに06年、10年、23年に麻薬や暴力事件などで捕まっていた。親戚たちなど周りの人は前回の事件・投獄から戻ってきてから、目つきや話が支離滅裂でおかしくなったことに気づいていたという(中で叩かれておかしくなったのかも、という話もある)。兄にも村の幹部にもその点は伝えていたが、重視されなかったという。
精神分裂症など6つの精神病患者に対して中国衛生省は「登録制度」を実施しており、「予防と危険行為をコントロールするために病院ー社区(町会)ー公安(警察)でリストをつくり重点的に訪問するなどにより、監視し、無料で薬と治療を提供している」という。ただ、この制度も患者保護の視点はなく、精神 病院に入れられたら一生出てこれない可能性もある。その一方で、今回の事件のように、実際にはその連携・監視も機能していず、誰も彼のケアに当たっていないというのが多くのケースのようだ。
もう一つのルポに出てきたのは河南省の作者の出身村での殺人事件だ。85後生まれの留守児童(4、5歳の時に親は新疆に出稼ぎに。外でネットカフェの商売に成功し戻ってきた兄夫婦と同居していた)で地元の高校1年(犯行当時)だった少年が村の70代の一人暮らしのおばあさんを刃物とレンガで殺人した上で強姦した事件だ。その日は高校から戻り兄の家でAVを見て寝たが、夜中にトイレに起き犯行に及んだという。04年に起きた事件で06年に捕まるまで彼は静かに地元のトップ高校で勉強を続けていたという。寡黙で勉強はよくできる生徒だったらしい。
前者の人間関係については多くが触れられていないが、後者は家族愛に恵まれず留守児童として孤独に生きる農村部の若者の荒廃と関係がありそうだ。壊れて精神が触れてしまった人による突発事件は増加しているようで、そういう事件対応の演習を郷鎮の公安など公的機関が開催している動画もあった。
人間は脆く、特に幼年期に親の十分な愛を得られないとその後も健全に育つのが難しい。90年ごろ以降から農村部の親は出稼ぎに出て働くのが一般的になってきて、大量の留守児童が出た。親は地元の祖父母に頼んで行くが、祖父母たりとて必ずしも孫の養育を歓迎しているわけでなく、子供は面倒なものとして親戚間で押し付け合っている様子も窺える。子供にしてみればなんと辛いことだろうか。
こうした言葉にならない辛さが壊れた人を作ってしまっているのかもしれない。これ、本日目にした農村部の闇なり。