本日の北京(2020年ブログ版)

軽く、リアルに北京を語るライターブログ

民主的にいこう by魏書生先生

昨日は中学の保護者会だった。初めて中学の担任の先生や保護者に会った。いやはや驚いた。時代は確実に動いている。先生から渡された中間テスト7科目の総合結果を見て、今日家に帰ったら「お仕置き」をされては困る、と担任は言う。「あんたの成績にはがっかり」したとか「だから言ったじゃないか、あんなことじゃ、こんな点しか取れないのは当然だ」とか言うな、という。なるほど。私も正にそう言いそうだった。

 

それよりも、残念だった、きっとあなたもがっかりでしょうとか、次回はどうするの?と同じラインに立って話せと。

 

そして、何より驚いたのは「教育局の規定により、学年とクラス内の順位は発表しません」とある。親たちはちょっとざわめく。中国ではランキングが命だ。5年前上の子の時は小学校2年生から小数点以下2桁まで平均点数を出して、他のクラスと比較し、生徒の分布を分析して、親にがみがみと言っていたのに。中学ではもちろん!学年内のランキングとクラス内のランキングが本人に渡された(さすがにその時点でも北京市では公表はご法度になっていた。地方では一番からビリまで張り出すらしい。その順番で席替えをするというシステムもあるとか。恐ろしい。どこまでも順位本意だったのが中国の教育だ。)

 

それが、変わった。それぞれの学生に良さがある。勉強はそのうちの一つでしかない。良い所を伸ばすのが大切。成績が悪い子も必ず大丈夫になるよう面倒見るという。これまでは成績が悪い子は大迷惑、速く転校してくれと言う態度だったのに、初めてこんな言葉を聞いた。

 

学校の校長と担任との関係も良いらしく、クラスも活発で先生が話すと皆目をキラキラさせて、時には狩人の目つきで先生を見る、だからどの先生からもこのクラスは好評という。

 

この担任の先生が勧めてくれた教育家、魏書生さんの動画を見て深く頷いた。元遼寧省の小さな市の中学国語教諭から校長を経て教育局長までやった現在70歳の退職した先生だが、いうことが正しい。

 

クラスの管理は民主的にすればするほど生徒と先生をつなぐ橋は強固に広くなるという。家では家事をやらせて自分の責任を果たす子供にせよという。親を愛していると口で言うだけでなく、実践でやらせることが大切。親の事さえ大事にしない子供が人民や国家を大事にできるわけないだろう。それでは孤独な可哀相な子供になってしまう。という本当にその通りだ。

 

教育。中国の教育のねじれはかなりひどいところまできて、先生も、生徒も親も皆くたびれ果てている。でも、普通の人たちはやっぱりもっと違う方法はないか、と模索している。昨日の保護者会でその空気を感じた。親はランキング無しに少し動揺していたようだが、他の先生の言うことには大方、頷いていた。

 

全くの偶然でこういう先生に出会ったのだが、本当に有難い。点数やランキングだけなく、人間としての個人を見てくれる先生に出合って本当に安堵だ。中国のプレッシャーに押しつぶされそうになって暴力的なほど強引に子供に大量の学習を強いる先生や親の例は後を絶たない。

 

トンネルの向こう側に光を感じた。これ本日の北京なり。