本日の北京(2020年ブログ版)

軽く、リアルに北京を語るライターブログ

3人産んでも良いと言われても!? 未だに人々を縛る呪縛と不妊治療

2016年に35年続いた一人子政策に終止符が打たれ2人目もOkになり、2週間前に3人目も良いよとなった。しかし、「そんなこと言ったって、金と労力がかかり過ぎるから生めないんじゃんか!」とすごいブーイングが巻き起こっている。おっしゃる通り。中国の子育ては金も心もかかり過ぎる。

 

 

今日は「奇妙な蛋生」というイギリス帰りのオシャレな上海女性が撮った不妊症カップルや子ども誕生に関するドキュメンタリーシリーズの2話を見た。豆瓣で8.7と好評だ。

1話は四川省の田舎の不妊症の35歳のカップル。3年前の不妊治療は失敗、今回はその後2回目だ。元より決して豊かではない彼らにとって500万円以上もする治療費は大きな経済的負担。奥さんは治療費節約のために2000元(3万4000円)の麻酔さえかけないで、激痛に耐えながら卵子を取り出していた。

 

しかし、結果は甲斐なく失敗。その後、何と彼女は旦那の家から追い出されてしまう。旦那は不妊治療にかかった60万元(約1000万円)を女性が負担しない限り離婚書にもサインしない、という。旦那は「自分は伝統的な考え方の人間だ、子どもがいてこそ自分の人生は完成する。」「彼女が生めないせいでお金を使った」という。お母さんと二人きりのほとんどコンクリート打ちっぱなしのガランとした一軒家に冷たく重い風が流れる。

 

一方、追い出された方の女性は地味にひっつめにしていた髪を茶色いボブにして「ゼロから出直しよ」とスッキリしている。「やることはやった、相手は男尊女卑(大男子主義)で私のことは全く理解してくれていなかった」という。「夫婦の愛って双方向であるべきでしょ?」と。

 

他にも広東省の約10歳年上の男性が奥さんに頑張って生んで、という。そもそも男女には役割と責任がある。僕は働いて金を稼ぐから、妻には家のこと、子どものことをやって欲しいと。奥さんも、家の面で大して貢献できていないから、子どもを彼のために生んで報いたい、それが彼への最大のプレゼントと話す。

 

なんだか辛くなる。子どもが居るのは幸せだし、欲しいと思うのも当然だが、だからと言って今生きている二人の生活を犠牲にするのは本末転倒だ。女だから生まないといけないという縛りが未だに現役なのだからこれはどう理解したらいいのだろうか!

 

北京の大都会を闊歩する中国人女性とは全く別世界!息苦しい女の責任を押し付けられながら生きている女性が農村にはいる。心の奥の奥にまで入り込んだ中国の「伝統」は今日もそこで生きる人間を縛り続けている。

 

これ、北京から見た田舎の息苦しさなり。