本日の北京(2020年ブログ版)

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夫婦別姓の次に起こる議論は?

中国ではあっさり70年前に夫婦別姓の権利を認めたので、別姓が定着している。子どもから見ると父ちゃん母ちゃんの姓が違うのはもちろん、自分と兄弟でも姓が違う場合もある。

 

さて、中国のように早々に夫婦別姓を実現した社会で、時代が下り男女間のパワーバランスや結婚のカタチが変って来た現代に起こる議論は何か?それは子どもの名前の命名権議論だ。

 

王パパと李ママから生まれた子どもは80年代までは「当然の事ながら!」王パパの姓を名乗り(李建国ではなく)「王建国」となった。そこには、子どもは父の家を継ぐものとする父系制社会のベースがある。その常識が見直され始めたのは79年の改革開放と一人っ子政策以降だ。

 

1980年の婚姻法改正では初めて「子どもの姓は父、又は母の姓とする」と改めてどちらでも良い点が加筆された。デファクトの父姓だけでなく、母姓を継がせたいという需要が増えた結果だろう。二人兄弟なら上は父、下は母姓というケースも珍しくない。

 

しかし、一人っ子政策が長くなってくると、今度は一人っ子同士の夫婦が誕生し、子どもを生む。男女平等の意識も強まっている。男尊女卑の観念から、女の子を間引きしすぎた結果、人口は不均衡をきたし、結婚では女子は売り手市場だ。両家が子供に自分の姓を継がせようと対立して譲らず、離婚するケースも出始めた。

 

そんな中で、彗星の如く登場したのが、複合姓のルールだ。2007年に戸籍管理を管轄する警察部門は初めての名前に関するルール「姓名管理条例(意見公募版)」を公表し、「子どもは父母双方の姓を名乗ることができる」と加筆した。この条例はその後14年間、正式には発布されていないが、中央の方向性として理解され、一部の地方政府はこれを実施している。

 

実際、2000年代から二つの姓を複合化した「梁寧浩然」のような名前の子供が私の周りでも一気に増えた。これは梁さんと寧さんの二つの姓を合わせた新しい姓だ。日本で言うなら杉本さんと川上さんの子供に杉本川上と付けてしまうわけだから、結構大胆だ。ただ、ヨーロッパでは複合姓は昔から一般的だったらしい。

 

梁寧君が将来、王張さんと結婚してできた子どもに梁寧王張花子と名付けるかどうかは不明だが、今のところ、命名ルールに漢字数は2文字以上6文字以内と規定されている。また、個人や国家の尊厳を傷つけるもの、さらに「毛沢東」と名付けることも禁止されているらしい。

 

中国で夫婦間バランス以外に子どものの複合姓導入理由の一つとして挙げられているのが、名前の深刻な重複現象だ。中国の张涛さんとか、王鋼さんや李明とかは多すぎてどちらの王鋼さんだかわからん、という状況がある。

 

夫婦間はあっさり平等を実現したものの、次の子供世代をどうするかで揉めて、創意工夫を凝らして発展しているのが中国のケースだ。夫婦別姓の後には、子どもの名づけ方で一揉めすることになりそうだ。

 

日本より先を行く中国の名前事情でした。