本日の北京(2020年ブログ版)

軽く、リアルに北京を語るライターブログ

動画配信アプリ「快手」の歌姫に4000元を摩ったドライバー

日本の動画配信アプリの年会に急遽参加することになって、その収録に向かう道、中国版ウーバーの「滴滴」を呼んだら、若い地方から来たっぽい袁さんが(おそらく他人の北京ナンバーの)新車の現代悦動で現れた。

 

車が走り出すと「熱いね」と言ってくる。滴滴の運転手は録音されているから黙っている人が多いのに珍しい。「そうだね」と答えたら、「ちょっと聞きたいんだけどいいか?」と言って、「女性に物を上げるなら何がいいか?やっぱり化粧品か?」とか、「何で女性は怒るんだ?」とか聞いてくる。一通り意見は言ったがどうも、腑に落ちてない様子。「で、あんたは一体何の罪を犯したの?」と聞いたら、「それが、結構大きな失敗しちゃったんだ」という。

 

何々?と聞いて戻ってきたのがこのタイトルだ。「彼女、歌の才能がすごくあって、PKだったから、つい衝動的に、3,4日間応援していたら使いこんじゃったんだ」と。

 

あらまあ。4000元といえば、彼の1カ月か、少なくとも半月の稼ぎだ。「奥さんがカンカンに怒っている」って、そりゃ当たり前でしょ。奥さんも小さいお子さんもいて、若くて元気で幸せな彼が何でそんなアプリに熱を上げちゃうのだろうか?

 

こんな顧客を餌食にしながら、動画配信は日本でも今やすごい産業になっているらしい。2011年にYouTubeLiveが始まり、15年、16年に雨後の筍のように乱立し始め、今や10社以上がひしめいている。中国ではティックトックが一番手だったが、その後、農村などを狙った「快手」が追って普及している。

 

これらは、あくまで動画を配信するプラットフォームであって、その内容は真面目にもどうにでもなるのだが、実際のところ、日本で一番「投げ銭」を儲けているのは、大体同じように目が大きくて顎が小さいフランス人形顏の女の子が「あら、銀ちゃん来てくれたのありがとう~」と媚びを売りながら、だらだらおしゃべりするタイプ。

 

ここでPKなどいろんなイベントをして、視聴している人たちから金を巻き上げる。サービス側はそれを30~50%ピンハネして儲けるというシステムらしい。

 

「日本にはアイドルを応援する「推し文化」があり、その発展上に投げ銭の普及は有る」と指摘があったが、そうなのか?北京のドライバーもまんまと大金を投入していたから、もう、国とか文化とかあんまり関係なさそうだ。

とにかく、リアルタイムで、お金を投げてあげた「けなげ」な女性からくる反応の「XXさん、ありがとう~うれしい~」が来るのが刺激になって熱狂しやすいらしい。旦那扱いされたいという虚栄心、共感や満足の表現、寄付したい、競争に勝ちたい、勝たせたいという競争心などさまざまな心理をこちょこちょされる仕組みになっているらしい。

 

そして、何より瞬時に携帯でそれが完結してしまうから、衝動的になりやすい。こんなサービスは人類の進歩に役立っているのだろうか?それとも人間を加速的に劣化させはしないだろうか?

 

人を狂わす、動画配信は日本でも中国でも、只今全盛らしい。

これ、本日の北京見聞録なり。