四捨五入で90歳になる父が最近、良く夢をみる、こんな夢をみたと言って話してくれた。
昔、何里も離れたおじさんの家からの帰り道、道なきあぜ道を通って良く迷った。この時も迷いながら、日が暮れて暗くなってようやく、家に辿り着いた。入り口には母が外に向かって座って待っていた。
ああ、帰ってきたかい、早く中にお入り、とお母さんが言う。
父は入り口でふと考えた。
いくら貧乏な粗末な我が家とはいえ、今日はやけに天井が低くて、狭い。
母は早くお入り、と呼ぶ。
腰を屈めて頭を低くしないと入れない。
そうか、これは墓だったのか!
と夢の中で気づいた。ーーー
「不思議なもので父親の夢は見ないのに、母は時々夢に出てくる」とも言い加えた。
「もうすぐ、お母さんに会えるかも知れない」と。
この話を聞いて、私は大きな声であかるく笑うしか無かった。
だって、しけ込んでもバツが悪いし、これはそんなに悪い話では無いからだ。真っ暗なブラックボックスが待っていると考えると怖いが、父が愛するお母さんのところに行けるのなら、怖くないだろう。
でも、息子は「ちっともおかしくないないのに何で笑ったりするんだ!」と怒っている。青いというべきか、優しいというべきか。
これ、我が家の爺じの夢の話。