▼コーヒー屋の売上が半減
こちらの経済はやっぱり良くない。行きつけのチェーン店カフェで10杯分のカードを価格の4割引で売っていた。これは過去10年で最低の価格。店のいつものお兄ちゃんに最近売上減っているの?と聞いたら「うん」という。どの位?3割位?といったら「もっともっと、半減近くだよ」という。この市内ど真ん中のモール内1階の大手チェーンカフェでこれだ。飲食は厳しいとは別の知人からも聞いたことがある。
昨日会った中国人の友人も北京せーふの公務員でさえ給与が出ないところが出てきているという。去年の夏に行った吉林省では半年出ていないのはザラという。鶴岡市など破産した地方せーふもある。
また、別のアラサーの中国人も最近の就職戦線は本当に厳しくて、彼女の頃、つまり6、7年前は新卒でも月給1万元(20万円)位もらえる人は周りで珍しくなかったが、今では4〜5000元もザラという。それでも職があれば良い方とか。もうすぐ若者失業率がでるが、1ヶ月に1時間でも仕事をしたら、それは失業にみなされないし、自分で事業準備していると申告すれば、ノーカウントされるような統計ルールに「優化」されたそうだ。(最近は「優化」はリストラ・首切りを「正しく」いう言葉にも指定されたらしい。そういえば、ゼロから全員コロナへの突然の移行も「優化」だった)
また、彼女の友人には大都市のコスト高の生活に疲れ、自分の地元に帰ってカフェを開いた友人が数人いるという。陶器の街、景徳鎮に流れて暮らす若者や大型映画スタジオのある街(浙江省の横店)に流れゆく若者なども最近は話題になっている。いずれも大都市の生活に疲れ、新しいライフスタイルをもとめてさすらう若者たちだ。
▼公務員倍率は57倍!
これらは都市部の上の方での出来事だろうが、全体で見ると公務員職はかつてないブームだ。23年は合格者4万人弱に対し、225万人が応募し、57倍(前年比でも48%増)の超狭き門だった。2014年比では倍増だ。理由は「安定しているから」だそうだ。いつ給与が出なくなるかわからないし、第一、縛りが多すぎる。毎週、かなりの時間をとられるとーいんのしそー学習に加え、パスポートも一定以上の幹部になると取り上げられてしまう。海外渡航は毎回申請して許可が降りないといけない。こんなシステムが導入されたのも6、7年前のこと。
▼日中で安定志向に向かう若い世代
一方、日本社会の保守性を批判する米国から東京に移り住んだ中国人インフルエンサーはこう分析する。日本の今の昭和の高度成長期を牽引した人たちは確かに創造的で大胆な仕事をしてきた。ただ、その人たちがまだ日本ではセンターにいて、下の世代が上にいけない。
でも、悪いのは彼らが居座っていることだけでない。若い人たちはチャレンジ精神もなく、安定志向で、全く覇気がない。就職戦線で全員同じ格好をして横断歩道を渡る一軍をみた彼女の小学生の息子は「(マトリックスの)troopers!だ」と叫んだという。SFの一シーンに見える位、現代の東京で同じ格好をして歩く均一化された若者が異様にみえたということだ。
▼日本の30年を数年で!圧縮型発展
つまり、日本も中国もゼロから立ち上げた経済発展期には大胆不敵で創造的な人材がでたが、其の下の世代は尻すぼみで求めるのは安定。日本はゆっくりそうなってきたが、中国は急速にそちらにシフトしている。中国の若者の好奇心は日本の80、90年代同様に旺盛で色々クリエイティブな面もあるのだが、この公務員人気は圧倒的多数の選択だ。
日本も中国も残念ながら良いニュースはない。戦後のリベラル秩序は「突然崩れ、元には戻らない」と英エコノミスト誌はいうが、日に日にそんな状況が色濃くなっている。
これ、本日の北京なり。