北京のオリンピック公園横にある国家会議中心で毎年開かれるデンタルエクスポに行ってきた。いわゆる歯科機器を中心とする歯科関連産業のエクスポだ。800以上の企業が参加、面積は5万m2。北京は6月、上海は秋、広州は冬に開催され、広州のが一番国際的で賑わうらしい。北京もかなり賑わっていた。
さて、この北京展示会で発見したこと。
1)あっという間の中国製造業の凌駕に唖然。家電でもパソコンでも携帯でも宇宙でも監視カメラやドローンでも中国企業がどんどん進歩しているのは知っていたが、改めてその急速な発展ぶりに驚愕した。歯科医(つまり医療機器)業界といえば、日独米などが圧倒的に優位を持っていた業界のはずだが、今や中国製の歯科医用CT、治療椅子、入れ歯材料や入れ歯を焼くオーブンなどあらゆる分野で品質はほとんど欧米に近づいている。そして、そしてなんと価格は10分の1。これはもう圧倒的な優位さだ。
中国国産初の歯科用CTを発売(朗X)は2011年のこと。それからたった10年ちょいで、怪しい中国製品から世界中から注目される強い中国製品に大変身したわけだ。日本の歯科関係者も「こまかい調整は必要だけど、彼らも丁寧に対応してくれるし、10年前は中国ビジネスで騙されたとかたくさんあったが、今は僕たちは全くそういうことはない。価格は圧倒的に優位で、世界の市場でもすごい強さだ」と言っていた。
今回の展覧会はドイツ、日韓、米、スイスの五カ国のオフィシャルな参加があったが、日本と韓国は混んでいたが、それ以外はあまり人もいない。もっぱら中国企業が強く、賑わっている。中東っぽい人やパキスタンから商談にきている人たちにも会った。
2)そのうちの一つの150人規模の中国メーカーの人と夕食を食べたが、フランクで国際的な会社の雰囲気が素晴らしい。もちろん彼らは英語のニックネームを持っている国際派だからこそ、今回広西省から北京出張にきていたのだが、平均年齢おそらく20代後半から30代でみんな若い。英語を喋る。40代の爽やかなボスもちっとも威張っていない。展示会出張中の夜はボスがお肉たっぷりのバーベキューと飲みきれないビールを社員に振る舞う。この辺のおおらかさも良い。こういう会社なら活気が溢れて、どんどん良い商品が作られるだろう。日本にない若さ、風通しの良さ、フットワークの軽さを感じた。
(それでも、景気はどう?と社長に聞いたら、今年は昨年以下で良く無い、と言っていた。これはどこでも同じらしい。)
3)知らないうちに「牙谷」ができていた!牙は中国語で歯のいみ。つまりシリコン・バリーならぬデンタル・バリー。四川省成都市の空港近くの資陽に近年政府の肝入りで2021年6月に正式オープンした経済開発パークだ。目下100企業、自称30億元相当のGDPという。土地の使用料はただ。歯の矯正案を作るAI企業など色々入っている。
そうそう、日本でも同じようなエクスポがあるらしいが、たんに自社製品の展示だけで、商品の価格提示も商談もNGで活気も全然ないとか。なぜか?既存ディーラーの利益を守るためらしい。この辺が日本が遅れてしまう閉鎖性だなあ。
いやはや、ちょっと見ないうちに世界が変わっている。中国の品質の向上速度は魔法級に速い。すっかり驚かされたエクスポだった。これ、本日の北京なり。