本日の北京(2020年ブログ版)

軽く、リアルに北京を語るライターブログ

腐乳餅(フールービン)の衝撃

私は旨いものが大好きだ。もう20年も住んでいるから大体有名どころは食べてみたと思っていたが、それは大きな間違いだった。この広東潮州の伝統的焼き菓子「腐乳餅」にはドーンと衝撃を受けた。

 

見た目は小さめの月餅。触ると油っぽくかなり硬い皮でカリッとしている。この皮に旨味成分の塊の豆乳のチーズのような「腐乳・フールー」が入っている。中は何と豚肉とナッツ類と大蒜という複雑なものがねちっとギュッと入っている。

 

中の餡は甘辛く、広東風の甘口チャーシューに近い。甘くしょっぱいが、それが、ちょうど良い所で止まっている。甘すぎない。オイリーといえば確かに体に悪そうにオイリーだ。でも、コレステロール値なんかケチなことを言っている人間を吹き飛ばす迫力がある。素敵に複雑でおいしいのだ。

 

こってりのフランスのモンブランのような、濃厚なマロンクリームとチョコレートと何かを足したような、そんなヘビーなスイーツの快楽に近い。イヤハヤ、見た目はその辺にありそうなラフな感じだが、食べた時に口で広がる幅広な快楽度がものすごい。

 

これに友人が送ってくれた同じく潮州の高級茶の鴨屎香を合わせて頂くと、これぞ至福の時だ。

 

広東人・潮州人の味の追求は貪欲さむき出しの迫力だ。久々に中国の食べ物で衝撃を受けた。

まるで別世界。

 

これ、マイナス9度でふきっ晒しの北京で頂いた南方の気力満点で芳醇なお菓子なり。

華やかなIT企業を支える近未来プランテーション

近頃中国の超有名IT企業T社と仕事をした知人から聞いた話。

彼女は、数年前の新語「996」(朝9時から夜9時、週6日出勤)のITの下層ハードワーカーたちの姿をまじかに見てきた。夜は9時はおろか、12時頃まで毎日残業。とにかく「中国の人は良く働く」と言っていた。

 

我が家の近くから北に伸びる地下鉄13号線の「上地」の駅からかなり行った所に何もない開発区があって、そこにいきなり、T本社がそびえ立つ。横には粗末なレンガ造りの建物があるだけで(社員寮と後から判明)、周囲にはレストランもお店も何も見当たらない。

 

中に入ると近代的なオフィスだが、廊下を通る時に見える部屋の中の様子は大量の人が大量のコンピュータースクリーンを前に出前の食事をかき込んだり、に凝視する様子だったという。

 

そして、何かしゃべりかけてても同じ次元に居ないような、ボウッとしている印象。会議で集まっても同僚同士でおしゃべりする人もいず、各自が携帯をいじる。会議全体に対するまとまり感もない。彼らから何かが抜けてしまっているような、オフになってしまっているようなそんな感じ。単に疲労だろうか?9割が血気盛んな20代の若い人で30代はここではボスだ。

 

そんな何かすごく不健康な一面があったと同時に、す・ご・いと感じさせられたものもある。

 

動画の生放送のために、開発されたAIの同時通訳穖だ。4機をプログラムして、通訳する有名人の過去のインタビュ―を学ばせて、その中で一番成績のよいものを採用。当日の通訳振りは驚くレベルの高さだったという。今や中国には数カ国語での会議の発言も瞬時にまとめて関係者に勝手に送付するようなアプリが1万円位で売られているという。音声の文字化やその反対はもちろん、瞬時にそれを翻訳できるのだ。

人間の通訳は過去のものに成る日も遠くない。中国は(プライバシー不在の)データ何でもOKな前近代的気質、失敗を恐れないチャレンジ精神と行動力、競争主義文化など色々IT開発に向いた要因が揃っていて速い。「何があろうと絶対失点しないという固い決意」で挑む日本のサラリーマン文化の対極だ。

 

世界先端というレベルの高さと同時に、世界に先んじたIT産業下の労働者の「うつろさ」を感じたという。そして彼女は言ったそれはまるで「近未来のプランテーションだった」と。

 

これ、世界最先端ITを突っ走る中国は北京、中関村での光と影の見聞録なり。

中国の若者にも非恋愛体質が進行中?

若者の非恋愛体質化は日本を始め、世界的なトレンドだが、中国でも果たして、そうなのだろうか?

 

中国ではシングルの成人人口が2018年に2億人を超えた。うち、一人暮らしをしている人は7700万人いる。(となると、残りの成人単身者の半分以上が親など誰かと同居していることになる。)

 

また、90後(つまり今の20歳~29歳)の人にとっての悩みは最大が「単身であること」(64%)!経済的プレッシャー(別の言葉では貧しい)45%、友達がいない28%、結婚を親や親せきからせかされる(「催婚」)21%とある。(珍愛網2019「90後」シングル層白書)

 

同調査では7割近くが恋愛を強く望んでおり、うち26%が結婚を強く望んでいる。一方で30%の人がシングル脱出(「脱単」)はどうでも良いと答えている。

 

20代の彼らの恋愛経験回数は2回が約5割、1回が2割、ゼロが約1割だった。同時に調査に参加した20代のうち15%が離婚経験者だった。

「分かれ」について、価値観(21%)、性格(20%)の不一致のほか、遠距離(13%)、経済的制限(12%)も少なくない。そして、別れ話は4割以上が「微信」経由だったという。恋愛もデジタル化している。

 

出会いが無い理由は①交際範囲が狭い(62%)、②心が動かされにくい(52%)、③内気な性格(34%)、④仕事で多忙(31%)、⑤経済条件が悪い(24%)、⑥好きな人が居ない、自分の外見に自信が無いが共に19%だった。

 

ということで、まだ20代なのに、結婚はしなくてはいけないことで、親たちなどまわりから催促される。自分もそれを望んでいるが、なかなか出会いが無いという人が7割。別に積極的に探していない人が3割。

探しているけど出会わない人の中には、シャイだったり、自分に自信が無かったり、そして貧乏だから自分は交際に不向きと主観的に思っている非恋愛体質な人もいる。

 

結婚は中国では、親から期待される義務で、しなくてはいけないもの。それ故に「脱単」(シングルからの脱却)や「催婚」(結婚催促)という独自の言葉がある。

 

そういう封建的農村社会に根差した結婚促進文化は薄れることなく、一貫して中国では色濃くあるようだ。その一方で、そこでモジモジしてしている人や、クールに「別に一人でもいいじゃん」と考える近代的個人主義者(至って正常だと思うが)が増えてきた。その結果、シングルが増えているのかもしれない。

 

これ、本日の北京なり。

 

3つの愛情:好き、情が湧く、愛している

引き続き恋愛研究。前回も書いた復旦大学の梁永安副教授の分析。

お題は「なぜ、中国の若者たちは互いに愛し合えなくなってしまったのか?」

 

社会が急速に変化しすぎる社会に生きて進学や就職など動き続けているため、ゆっくりと情を育むのが難しくなっている。さらに、年々値上がりする家の不動産や仕事のプレッシャーから、男女の感情に関しても功利的になりがち。同時に期待値ばかりが膨らむ一方で現実は厳しいので、それを相手に求めてしまって功利的になり勝ち。

 

相手には予測可能性や安定性を求めるが、自分により良い選択が降ってきたら、自分はまず安定しなくなる。つまり、伝統と現代の矛盾に生きている。

 

更に、今の若い人たちは自分が相手に何かをしてあげて幸せと感じたり、人に合わせる能力が低い。相手に対して、「あなたは私のリソースになって、私の願いに合わせて、私を幸せにしてほしい」と一方的に願うケースが多い。

 

銭鐘書は中国の古代に愛はなく、(長く居る事から生じ、相手を思いやる気持ちの)恩情しかなかったといった。我々の社会は社会性のある情感を育んだことが無い。知らない人同士が社会で交流し、知らない男女が相愛するということを知らないできた。若い人たちは内面が成長せずに、小学生の心持ちのまま大人のことをやっている。我々の愛情文化の発展の時間は短すぎる。相愛のレベルに達するには精神世界を持った二人でなくてはならないし、それには自分の価値観や思想を持っている無いといけない。

 

これは我々の道徳観とも関係している。「好き」を「愛」と勘違いする。だが、実はまだ入り口に過ぎない。愛するための基盤としてはぜい弱。その途中でもし、片方が他の人と接して試してみたい、果たしてどちらが愛なのかを比較したいと思っても、それは我々の道徳では許されない。

 

なぜ、人にやってあげる事に幸せを見いだせないかというと、そもそもその人が幸福感に満たされた世界に生きていないから。人を包み込む幸福感はまた別の幸福感を生み、プラスの循環ができるが、今の社会で生きている人の多くがこうした循環を欠いている。

 

また、一人っ子政策で、自分の生活は両親が全て上げ膳下げ膳でやってくれて、全てが自分中心に回っていたために、自分の生命に責任を持ち、他人と一緒に何かを成し遂げる積極的な力に欠けている。

 

若い人は(精神性を共有するレベルの愛に達するのは難しいが)まずは、人に関心を寄せて、人の立場に立って、人を思いやる気持ちを努力して学ぶべきだろう。

地域の物品交換グルチャに現れた「結婚」の条件--家と車、美貌、戸籍に金、権力!

普段は自分の家から出た玩具や本、服、キッチン用品、家具などの中古品や不要なもらい物の新品商品を交換する物品交換グルチャがある。大学関係者が多いこのマンションや周辺住民500人がメンバーだ。今日はそこに「嫁」「婿」情報が飛び交った。

 

「会社の女の子2人とも25才。XX大学かYY研究所の男子リソースがある人、個人的に連絡下さい」

「ああ、いるよ、いるよ」

「私も居るよ、92年生まれ、185センチ、男。家と車有り」

 「私の方は92年生まれの女の子。北京師範卒で戸籍ありが男の人探している」

「昨日見た結婚広告にはこういう男の子がいたわよ。『きれいで、家と車があって、帰国で、高収入の女性求む』だって」

「最近は自分の条件が良くても更に自分以上の条件の人を探すようになったのね。昔は男性は自分よりちょっと下を探したものだけど。」

「今は女の子は社長を、男の子は社長令嬢を探したいと思っているのよね」

「同僚の息子さんは83年生まれの逸材。①綺麗で②家庭背景がとても良いこと(権力と金の両方を持ち)③良い仕事に就いている女性を探しているわ」

 

という会話。日本のお見合いサイトにも収入条件などはあるのは知っているが、この「言語」があまりに美しくない。中国独特なのが北京戸籍の有無と、権力バックグラウンド。つまりせいふやとうにコネがあるか、ということがここでは重視されているらしい。

 

これでは愛のある結婚ではなくて、本当に「物品」交換と同列?!まさに、合弁会社の設立である。

唯一の救いは、これを話しているのは本人ではなくて、おせっかいな周りの(働いている)中年女性たち。

若者が、こんな風に自分の結婚を扱われた日には結婚したくなくなるのも分かるわ。(若者の結婚件数は毎年減少しているし、離婚率は日本の倍近くにグングン上がっているのは前にも書いた通り)

 

やっぱり、中国で若者たちの結婚を歪めて、矮小化しているのはこんな品のひの字もない大人たちなのかもしれない。

 

これ、本日の北京の携帯で熱く交わされているお隣情報なり。

中国から消えるクリスマス

北京から「クリスマス」がすごい勢いで消されている。

ちょっと前まではショッピングモールはもちろん、幼稚園や小学校やテレビなど、どこをみても今の時期はクリスマスの飾りや音楽が躍っていた。

 

園・小学校でクリスマス関連のイベント禁止のお達しが下ったのが、4年位前だったか。それでもデパートなどに行けば普通にツリーがあった。しかし、今年はクリスマスの飾りはもうない。クリスマスなどを祝うのは自国文化の自信に満ち溢れた同国ではひこくみん、というのが昨今の「メロディー(主旋律)」だからだ。

 

数日前にも郊外で地元政府から、とある小売り企業にクリスマス関係の飾りをすぐに撤去するよう命令がでたらしい。急に、しかも口頭でというのが如何にも中国の末端。こういう気まぐれで強引なご指導が毎日随時降ってくるとは、商売している方はたまったもんじゃない。

 

自信があれば、自然と他者にも寛容になるはずなんだけどなあ。

これ、クリスマスイブの妙に静かな北京なり。

 

 

いまどきの恋愛と結婚、愛のカタチの解放とクール化が同時進行?

中国の若者が日本同様に非恋愛体質になっていることは前回書いた。

そこで、ちょっと調べてみた。

中国の離婚率は(単純にその年の結婚登録数でその年の離婚登録数を割った数)2002年から右肩上がり。2015年は1225万組に対し、離婚は384万組、ほぼ3組に1組の割合だ。2019年はこれが950万に対し、415万で43%に増えている。確か今年は米国をも抜いたらしい。北京、上海などの大都市で特に高い。お見合い番組でも片親で育ったとか、今一人で子育てしているという人が結構いた。

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近些年我国的离婚率一直在攀升,2019年更高达43%,全国登记结婚的共有947.1万对,离婚的就有415.4万对。中国の結婚率(人口千対)は2013年に9.9、2018年は7.2で日本より高い。人口千対の離婚率は2002年は0.9、2017年は3.2に急増し、日本の倍だ。

一方日本の2018年(H30年度)は 59万に対し約21万組で単純に割ると36%。

◎婚姻件数は 59 万 0000 組、婚姻率(人口千対)は 4.7 と推計される。
◎離婚件数は 20 万 7000 組、離婚率(人口千対)は 1.66 と推計される。

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結婚満足度は大都市、高学歴の方が、田舎や低学歴より高い。ざっというと農村部の地味な生活をしている人の方が結婚に満足していないらしい。

 

北京大社会学調査研究中心が2015年に実施した調査を書こうと思ったが、結果が怪し過ぎる。「80後」は22歳、「95後」は18才前に男女全国平均でロストバージンしている、博士研究生の恋愛歴は平均7人ってあり得ない。だいたい、調査した時点で「95後」の人は20年しか生きていない人たち。平均18才で初体験って、あり得ないでしょう。使えないデータだ。

 

2008年と古いが、こちらの調査は結婚した理由は23%が「年だから」、22%が「突然結婚したくなったから」、5%「できちゃったから」、3%が「もう面倒だから」。「愛があるから」は4割以下だったそうだ。このカジュアルな感じは肌感覚にあう。結婚するのは「済ますべき事」で「負担」だから、さっさと片づけようという感じが田舎へ行くほど強いようだ。

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网易网友却通过投票告诉我们:他们结婚时并不是因为爱情。有23%的人因为年龄大了就结婚了;22%的人说,不知道为什么突然想结婚就结了;5%的人因为女方怀孕了需要结婚;还有3%是因为自己不想再折腾了;真正因为爱情结婚的人还不到4成。

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そして、面白いのが交際3カ月以下で結婚した人など交際期間が短い人ほど結婚に不満を持っている。1年~3年の交際後となると満足度が高まる。

 

あと、最近は同棲も市民権を得てきていて、増えている。中国ではまだ同棲が新しいほ。つまり、結婚するなら相手はバージンじゃないとイヤ率がへっているなど、恋愛のカタチが伝統的からの解放への道が始まったばかり。

 

その一方で、異性に関心が薄れてきている「佛系」や(日本由来の)「草食系」が増えているという。

 

圧縮型発展を遂げる中国では日本の2つか3つの「時代」が一緒にやって来ている感じかもしれない。

これ、本日の北京なり。